マンションやアパートなどを賃貸する際、当該物件の設備が故障した場合に、
修繕費用を誰が負担するのかが問題となります。この記事では、主に賃貸店舗における修繕費用の負担について詳しく解説します。
一般の賃貸物件の場合
一般の賃貸物件の場合、法律で定める原則的な義務として、貸主は借主が賃借している部屋を使用・収益させる必要があると定められています(民法601条)。
このため、賃貸物件の設備が故障した場合には、一般論として(特に故障によって物件の使用・収益に影響を与える場合)貸主は修繕義務を負担する必要があります。
賃貸店舗の場合
次に、オフィスや店舗用の賃貸物件について解説します。
オフィスや店舗で問題となるのは、一般の賃貸物件と同様、設備の不具合などですが、個人の物件と異なり高額となる場合が多いため、通常はあらかじめ契約書で詳細が規定されています。
例えば店舗の場合、シャッターや自動ドアなどの設備が不具合となった際に、当該修繕費用は貸主が負担するのか、借主が負担するのかは費用的にも大きな問題です。
店舗用シャッターの修理費用は100万円程度かかる場合もあり、契約時にどちらが支払うかについて明確に規定されるべきです。
また、備え付けの空調の調子が悪かったり、貸主が提供しているインターネットやWifiなどの通信環境が不具合となる場合も想定されます。
その他にも様々な事例がありますが、その分野の専門家以外では判断が難しいため、特に商用の契約書を作成する場合には、弁護士に相談するなどの準備を行うことをお勧めします。
以前の借主が設置した設備の場合
オフィスや店舗利用の際、賃貸物件内設備の一部が「以前の借主の造作物」であった場合には、一般的には当該設備の修繕費用は借主の負担となります。
つまり、現在の借主が設備をそのまま使用しても問題ないが、以前の借主の責任ではないという趣旨になります。具体的には、備え付け以外のエアコンなどの空調や自動ドアなどが該当します。
この際には、以前の借主が貸主に当該設備の譲渡契約を取り交わします。
契約書に「設備」の記載があるかどうか
一般の居住用賃貸物件でも、またオフィスや店舗利用などの商用賃貸の場合でも、設備が故障した場合に貸主が責任を負うかどうかは、賃貸借契約書に「設備」としての記載があるかどうかがポイントとなります。
エアコンやガスコンロ、厨房設備などの場合、上述したとおり以前の借主が残置していった設備を次の借主に提供する場合があります。
こうした状況下では、賃貸借契約書に当該設備の記載を省き、以前の住人が留置していったものをそのまま提供して、特段に賃貸借契約書に記載しない場合もあります。
賃貸借契約書に賃貸物件の「設備」としての記載がない場合は、賃貸借契約時の合意内容として、当該設備を貸主が借主に使用・収益させる義務を負担しないものと考えられます。
その一方、特に商用賃貸物件の場合には、一般的に契約時に取り交わされる金額や毎月の賃料が高額となるため、契約時に契約内容として詳細に記載することはもちろん、十分な説明・確認を行わないと、後々問題となる可能性があるので注意が必要です。
まとめ
賃貸物件の設備が故障したり破損した場合に、修繕費用を誰が負担するのかは大きな問題のひとつです。
この記事を読んで、設備の故障に際しての修繕費用負担についてよく理解し、事業運営にお役立てください。